沚rらぶる神、デーモン


@荒らぶる神、デーモン
もともとユダヤ教における”神”は慈愛に満ちて人に対応するばかりではなく、残酷で破壊的な性格、いわゆる「荒らぶる」神としての側面をもっていた。ところが、時代の推移や信仰のグローバルな展開に従い、神は”善”や”愛”の権化そのものと変化していく。そうすると、日々の不幸や悲しみ、悲劇や破壊という”悪”がどこから派生するものかという疑問が生まれる。それに応えるように登場するのがデーモン(Daimon)という言葉である。
この言葉はもともとギリシャ語のダイモン(Dimon)に由来し、「超自然的」「霊的存在者」を意味する。ギリシャでは、人間に突如として訪れる不可解、かつ運命的な出来事は結果の幸不幸に関係なく全てダイモンによるものと考えられていた。つまり、ダイモンは人間が生まれながらにもつ守護霊と見なされていたのである。ギリシャの伝統的な詩人ホメロスの場合も、ダイモンを「神」、または「神の力」という意味で使用している。
ちなみに、その守護霊と人がよい関係にある場合はエウダイモン(endaimon)といい、悪い関係にある場合はカコダイモン(kakodaimon)という表現がなされた。つまり、デーモンは悪である、という図式はなかった。現代英語でも、デーモンは「悪魔」「鬼神」と言った意味のほか「名人」「精力家」といった意味ももつ。
デーモンには以上のように「超自然的存在、神」に似た意味があるが、”愛”の権化たる神が、人間を苦しませるという矛盾がおきてしまった。キリスト教徒の指導者たちはそこで、頭をひねり納得できる一つの概念を作り出した。それが、神の”御使い”だったはずの天使の何人かが神の命令に背いてあろうことか反逆する暴挙に出たとういう解釈であった。
あくまで、言語的な背景をもとにした解釈で、今日ではサタンやデヴィル、デーモンといった本来の意味は歴史の流れで変貌してしまい、これらの言葉の使い分けはさほどその意味をもっていない。
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